「建築職の公務員」と聞くと、
建築基準法の審査をする人、というイメージを持つ方が多いかもしれません。
ただ実際には、建築職の公務員の仕事は一つではなく、
配属される部署によって、仕事内容も求められる役割も大きく異なります。
同じ建築職でも、
- ルールに照らして建築計画を判断する仕事
- 公共施設をつくり、直し、維持していく仕事
- 土地やまち全体の将来像を整理する仕事
と、関わり方はかなり違います。
この記事では、
建築職公務員の代表的な3つの部署である
- 建築審査部門
- 営繕部門
- まちづくり部門
について、
就職・転職を考えている人が「配属後の姿をイメージできること」を重視して紹介します。
この記事は、建築職公務員の仕事全体を整理した
まとめページの一部です。
👉 建築職公務員の仕事内容・やりがい・大変なこと・資格事情まとめ
建築審査部門の仕事内容
建築審査部門は、建築職公務員の中でも
建築基準法を中心とした「建築ルール」を扱う部署です。
設計事務所や工務店などから出てくる建築計画を見ながら、
「この建物、建築基準法的に大丈夫か?」
をチェックするのが、役割になります。
設計や施工をする仕事ではありませんが、
図面を見て、法律に照らして判断し、その内容を説明する
という場面が日常の業務となります。
建築確認申請や届出のチェック
日常業務で一番多いのが、建築確認申請や各種届出の確認です。
- 図面や申請書の内容確認
- 建蔽率・容積率・高さ制限などのチェック
- 用途地域や防火地域との整合確認
設計図を見ながら、
「この計画なら問題なさそう」
「ここは要確認だな」
といった判断を積み重ねていきます。
感覚で判断するのではなく、
法律に基づいて判断するのが、この仕事の特徴です。
窓口・電話での建築基準法に関する問い合わせ対応
建築審査部門では、
窓口や電話で建築基準法についての問い合わせを受けることも多くあります。
- 「この土地にはどんな建物が建てられるか」
- 「この用途は問題ないか」
- 「この計画、建築基準法的にどう考えるか」
といった、初歩的な相談から少し踏み込んだ内容まで幅広く対応します。
その場で答えられるものもあれば、
「一度確認します」と持ち帰ることも普通にあります。
特にグレーな内容については、
はっきり断定せず、考え方や判断の軸を説明する対応になることが多いです。
現地確認や指導対応
建築審査部門は、デスクワークだけの仕事ではありません。
- 工事中や完成後の建物確認
- 建築基準法に関する是正指導
など、実際の建物や敷地を見に行く業務もあります。
建築審査部門のやりがい
建築審査部門のやりがいを一言で言うと、
「建築基準法を武器として使えるようになること」です。
建築審査では、
- 図面を見る
- 条文を引く
- 相談に答える
という作業を日常的に繰り返します。
そのため、勉強して覚えるというより、
仕事をしながら建築基準法が体に染みついていく感覚に近いです。
用途地域、建蔽率・容積率、高さ制限などの基本的な考え方は、
自然と「自分の言葉で説明できるレベル」になります。
この感覚は、
建築審査部門にいる間だけのものではありません。
- 営繕部署に行っても
- まちづくり部署に行っても
- 他部署や別の自治体に異動しても
「建築基準法が分かる人」という立ち位置は、
どこに行っても確実に強みになります。
正直、
「あの人に聞けば、基準法の話は早い」
そう思われるようになるのは、
かなり大きな価値です。
知識が積み上がっていく実感と、職員としての信用が増していく感覚は、
建築審査部門ならではのやりがいです。
建築審査部門の大変なところ
建築審査部門で一番大変なのは、
建築基準法の条文に、答えがはっきり書いていない場面での判断です。
- イレギュラーな相談
- 解説書を見ても分からない
- 前例もない
こういったケースでは、
「この計画をどう整理するか」を自分の頭で考える必要があります。
完全な正解がない中で、
- 条文の趣旨
- 制度の考え方
- これまでの運用
を踏まえて判断しなければならないため、
最初のうちはかなり神経を使います。
この部分は正直しんどいですが、
同時に、
建築基準法を“読める”から“使える”レベルに引き上げてくれる経験でもあります。
営繕部門の仕事内容
営繕部門は、
自治体が持っている建物を「つくる・直す・維持する」部署です。
対象になるのは、
- 庁舎
- 学校
- 公民館
- 保育園
- 消防署やその他の公共施設
など、いわゆる公共建築物です。
設計事務所や施工会社のように
「自分で設計して建てる」仕事ではありませんが、
建物づくりの全体を行政側として管理する役割を担います。
新築・改修工事の計画づくり
営繕部門の仕事は、
いきなり図面を描くところから始まるわけではありません。
まずやるのは、
- 施設を使う部署との打ち合わせ
- 「何が必要で、何が不要か」の整理
- 予算やスケジュールの調整
といった、計画段階の調整です。
要望をそのまま形にするのではなく、
- 予算的に可能か
- 法令的に問題ないか
- 維持管理の負担が大きくならないか
を考えながら、現実的な形に落とし込んでいきます。
設計・工事を進めるための事務
営繕部門では、
- 設計を委託する
- 工事を発注する
というケースがほとんどです。
そのため日常業務の多くは、
- 設計内容の確認
- 積算・金額チェック
- 仕様や条件の整理
- 契約や発注に関する事務
といった、作業になります。
「建築っぽい仕事」というより、
建築知識を使う事務に近いイメージです。
工事中の調整や現場対応
工事が始まると、
- 工事業者による工程会議への参加
- 設計内容と施工状況の確認
- 設計変更が必要になった場合の整理
といった対応が発生します。
現場に行くこともありますが、
常に現場に張り付く仕事ではありません。
現場対応のあとには、
- 打ち合わせ内容の整理
- 変更理由の上司への説明
- 関係部署との調整
といった事務作業が必ずセットでついてきます。
営繕部門のやりがい
営繕部門のやりがいは、
「自分が関わった建物が、長く使われ続けること」です。
- 学校や庁舎が無事に完成した
- 老朽化した施設が使いやすくなった
こうした成果は、
完成した瞬間よりも、
数年たってからじわっと効いてくるタイプです。
また、営繕部門で身につく
- 予算感覚
- 工事の進め方
- 設計者・施工者とのやり取り
といった経験は、
- 建築審査部門
- まちづくり部門
- 他の技術系部署
に異動しても使えます。
「建物が建つまでの流れを分かっている人」
として見られるようになるのは、
営繕部門ならではの強みです。
営繕部門の大変なところ
営繕部門で一番大変なのは、
「板挟みになりやすい」ことです。
- 使う側は「もっと良くしたい」
- 施工側は「現実的に厳しい」
- 行政としては「予算とルールがある」
この間に立って、
どこで折り合いをつけるかを考えるのが日常です。
また、
- 工事の遅れ
- 予期せぬ不具合
- 予算調整
など、自分ではコントロールしきれない問題が起きることもあります。
まちづくり部門の仕事内容
「まちづくり」と聞くと、
少し抽象的で、何をしている部署なのか分かりにくいと感じる人も多いと思います。
まちづくり部門は、
建物1棟を見る仕事ではなく、エリア全体をどう整理していくかを考える部署です。
建築審査が
「この建物はルールに合っているか」を判断する仕事だとすると、
まちづくりは
「そもそも、この場所にどんなルールをかけるか」を考える仕事です。
都市計画・地区計画に関する仕事
まちづくり部門では、
都市計画や地区計画といった仕組みを扱います。
地区計画とは簡単に言うと、
「このエリアでは、どんな建て方をしてほしいかを決めるルール」です。
例えば、
- 建物の高さを抑えたい
- 店舗が増えすぎないようにしたい
- 住宅地としての落ち着きを守りたい
こうした考えを、
建築基準法よりも一段細かいルールとして整理します。
実際の仕事は、
- 規制内容を検討する
- 地域の方々と規制の説明をする
- 他部署と調整する
といった、業務が中心になります。
地権者との調整
地区計画や都市計画を扱うということは、
土地の使い方に制限をかける仕事でもあるということです。
これはつまり、
- 今までできていたことが、できなくなる
- 将来の建て替えに影響が出る
可能性がある、という話でもあります。
そのため、まちづくり部門では
土地の所有者(地権者)との調整が避けられません。
- なぜこの規制が必要なのか
- いきなり不利になる話ではないか
- 将来どんなまちを目指しているのか
こうした点を、
何度も説明しながら整理していきます。
「決める側」ではありますが、
一方的に決められる仕事ではないのが、まちづくり部門の現実です。
区画整理・再開発に関する業務
まちづくり部門では、
区画整理や再開発といった事業に関わることもあります。
区画整理は、
道路や土地の形を整理して、
まちの骨組みを整える事業です。
再開発は、
古くなった建物が集まるエリアを、
まとめて建て替える事業です。
このような大規模のプロジェクトに関われるのもまちづくりの魅力です。
これらの事業は期間が長く、
数年単位で関わることも珍しくありません。
住民説明会・意見対応
まちづくり部門では、
住民説明会や個別の意見対応も日常業務の一部です。
- なぜ規制をかけるのか
- まちはどう変わるのか
- 生活にどんな影響があるのか
を、専門用語をできるだけ使わずに説明します。
建築の知識以上に、
説明の順番や言葉の選び方が問われる場面も多い仕事です。
まちづくり部門のやりがい
まちづくり部門のやりがいは、
自分が関わった計画に沿って、街が変化していくことです。
- 策定した地区計画に沿って、街が変わり始めてくる
- 何年も調整してきたエリアが、ようやく動き出した
成果が出るまでに時間はかかりますが、
後からじわっと効いてくる仕事でもあります。
また、
- 建築基準法
- 都市計画法
- 地域やディベロッパーとの調整
を横断して扱うため、
どの部署に行っても通用する調整力や考え方が身につきます。
まちづくり部門の大変なところ
一番大変なのは、
関係者全員が賛成することは無いことです。
- 地権者や住民の意見が食い違う
- 全員が納得する答えは出ない
そんな状況で、
「行政としてどこまで整理できるか」を考え続けます。
時間もかかり、
成果が見えるまでが長い点は、
正直しんどいところです。
まとめ
建築職公務員の仕事は、
「建築に関わる仕事」という点では共通していますが、
何を軸に仕事をするかは、部署ごとにまったく違います。
- 建築審査部門は、
建築基準法を軸に、個別の建築計画を判断していく仕事 - 営繕部門は、
公共施設をつくり、維持・管理していく仕事 - まちづくり部門は、
土地やエリア全体を見て、将来のまちの方向性を整理する仕事
どれが「正解」ということはなく、
自分がどんな建築の関わり方をしたいかで、向き・不向きが分かれます。
- 建築基準法を読み解き、判断することに面白さを感じる人
- 建物を設計するとこから、工事するところまで関わりたい人
- 建物だけでなく、広い視点で計画を作りたい人
それぞれに合う部署があります。
建築職公務員は、
設計や施工とは違う形で、
建築の専門性を長く、安定して使い続けられる仕事です。
この記事が、
「建築職公務員として働く自分」を具体的に想像する
きっかけになれば幸いです。
建築職公務員の仕事内容や働き方は、
配属先や担当業務によって大きく変わります。他の仕事内容や、資格・つらさについても知りたい方は、
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